浅い眠りの時によく見る悪夢。
まどろみのなか、得体の知れない空間が自然に現れる。
寝ているようだけど、意識は目覚めて、世界はそちら。
その空間、今、存在を意識している場所。
薄暗い、灰色の世界。狭苦しい。暑いし寒い。
周りに意識を向ける。
アンティークが腐食したような、文字のない看板。
崩れ落ちそうな標識。
どこか完全に寂れて忘れ去られたような田舎町の雰囲気。
そして、巨大な老木の根っこが見える。
「そこを見てはいけない」
僕らしき感覚が訴える。
でも僕の感覚は見てしまう事を知っている。
老木の根っこのある部分のシミを。
そしてやはり見てしまう。
その刹那。シミが大きくなり、変形し、般若の顔が浮かび上がり、脳にそれがこびりついてくる。
「ごぉぉぉぉぉぉぉ」
脳に何かの轟音がやってくる。
そして、体が動かなくなる。金縛りだ。
「別にいい。体なんて動かさなくても。」
そう思うや否や、何かが締め付けられる。息が苦しくなる。
「夢だ。これは夢だ。」
目を覚まそうとする。
させまいと、般若は視覚を回転させる。目が回り、脳が回り、目を覚まそうとする意識が飛んでいく。
苦しい。ダメだ。
それでも必死で、とにかく目を開けることに集中する。
ようやく目が覚める。
激しい動悸と、冷や汗が夢を思い起こさせる。
寝たまま、目だけ開け、ふうっと一息つける。
暗がりの中、危なかったと、何気なく、部屋の角の土壁を見る。
シミを発見する。